剱岳 大脱走ルンゼ(ダイレクトルンゼ)滑降 & 雄山ルンゼ滑降

【山域】北アルプス北部 剱岳(2999m) 雄山(3003m)
【場所】富山県
【日時】2013年5月3日〜5日
【コース】
 3日 室堂〜雷鳥平〜別山乗越〜剣沢(テント泊)
 4日 剣沢〜平蔵谷〜インディアンクロアール〜源次郎尾根〜剱岳山頂〜大脱走ルンゼ滑降〜平蔵谷〜剣沢(テント)
 5日 剣沢〜別山乗越(剣御前小屋)〜雷鳥沢滑降〜雷鳥平〜室堂ターミナル〜一ノ越〜雄山〜雄山ルンゼ滑降〜室堂ターミナル
【メンバー】いの、いけしゅん、野人

3年前に奥穂高直登ルンゼを滑ってから、次は「剱岳大脱走ルンゼ」とどうしても意識してしまっていた。
しかし、登山条例がネックで3年間踏み出せなかった。

登山届出条例(積雪期)
冬期の剱岳は日本海側気候のために豪雪になり、元来の峻険さと相まっ山条件は一層厳しく、毎年のように遭難者が出ている。富山県は1966年に富山県登山届出条例[を定め、剱岳周辺について「危険地区」とした上で12月1日から翌年5月15日までの間に危険地区に立ち入る者に対し「登山届」の提出を義務づけている。登山届の不提出や虚偽記載などの違反行為に対しては罰金が科せられる。

奥穂を一緒に滑ったいけしゅんさんはあれから結婚など環境も変わり昨年も一昨年も乗る気ではなく、単独ではもぐりで行くしかなくて不安も大きくて時間が過ぎるだけであった。
今シーズン、実力のある姫路のいのさんと何度かご一緒しているうちに一緒に行こうという話が盛り上がってきた。
ダメ元で登山届を試しに提出したところあっさり受理されて、一気に夢物語が現実化してきたのだった。
以前は乗る気でなかったいけしゅんさんも結婚して子供が生まれたとはいえ元々好きな人だから血が騒いだのか行く事になったのでした。


青 登り インディアンクロアール
       赤 下り 大脱走ルンゼ(ダイレクトルンゼ)
5日朝撮影


5月2日
仕事を終えていけしゅんさんと待ち合わして、いのさんの待つ姫路に向かう。合流して富山県へ。
深夜にアルペンルートの立山駅に到着、朝まで仮眠する。

5月3日
準備をしてケーブルカーの行列に並んでいると、濃イスギさんに声を掛けられびっくり。今年も来ていたのか好きな人だと心で笑う


立山ケーブルの貨車


テント泊は一年ぶり、重荷に喘ぐ。
幕営地は正面の山の裏側


雷鳥坂で大山でほぼ毎回お会いする神戸のおじさん達にばったり


別山乗越(剣御前小屋)で剱岳にご対面

乗越から剣沢のクラストした斜面を下り、テント場に到着。



夜は風が強くテントがかなり揺さぶられた。


5月4日
剱岳アタック日


夜明け前後はガスに覆われ停滞も考えたが、急激にガスは流されここまでの晴天に(6時45分)

出発準備を整えパートナーの準備完了を待っていると、横でテントを撤収していた大学山岳部のテントが入った袋が風に煽られ吹っ飛び剣沢下へ滑落。
必死に走って追いかける大学生!間に合いそうもない。  スキーで滑って先回りして捕獲成功。



それは良かったけど、何故か?いのさんスキー1本だけ背負って走って来た。
ワイヤーの流れ止めが切れてスキーが落ちていったらしい。
クラストした斜面、最悪真砂沢出合の平坦地まで落ちたかも・・・
スキーを探してさらに下に滑っていくと雪面に横向きに刺さった板発見。  良かった♪




雪は硬く、平蔵谷出合でアイゼン装着



平蔵谷には先行が2パーティ。1パーティはインディアンクロアールに取り付き、後続のパーティは平蔵谷を詰めて行った。
我々は逡巡したが、トレースを期待して予定通りインディアンクロアールに入った。




右上 源次郎尾根U峰をザイルで確保してクライムダウンするクライマー
インディアンクロアールはこの上に達するので、頂上へのアプローチはこの源次郎尾根や一般ルートの別山尾根よりは雪壁オンリーで比較的簡単ではある。



そうとはいえ、インディアンクロアール中間部(右岸岩稜沿い)はかなりの斜度で緊張し、
雪が緩めばかなり危うい状況になりそうだったが、今回は日射が無いのが幸いした。



源次郎尾根U峰


この顕著なピナクルがインディアンの由来だろう



インディアンクーロアールを抜け、源次郎尾根U峰上の雪原に出ると先行パーティーが目の前に見えてきた。
急速にガスで視界は悪くなり表層5cmのクラストした層が足元から板状に雪崩れ、山頂からの滑降にかなり不安を覚えつつも、彼らのトレースのお陰で山頂到着。
頂上でラッセルのお礼を言うが、先行にさらに単独のボーダーがいて足場を作ったらしい。その人はそのまま山頂から大脱走ルンゼをガスの中滑っていったらしい。 凄過ぎる。

彼らに写真を撮ってもらった

剱岳登頂

そうこうしていると、別山尾根から次々人が登ってきて大賑わいになるが視界は悪く風も強いので次々下山していく。
ロープをささっと張って池の谷へ降りていったグループには手際の良さに関心した。
白いジャケット着た青年二人の富山県警山岳警備隊は爽やかだった。


視界は回復の見込みが無いので意を決して滑降開始



山頂から大脱走ルンゼを降りるには、スラフを落としながら斜滑降するしかなく、視界不良の急斜面を延々斜滑降して下降。


見えない怖さ

最悪10m程の視界。
登りのトレース沿いに滑ると狭いインディアンクーロアールに入ってしまうので、
かろうじて視界が利いた登りで確認できた右方向の広い大脱走ルンゼへ極度の緊張状態で滑り込んでいく。


喉に近付き、斜度はMAXの50度となる





仲間がいると心強いが、大山弥山沢を単独で滑った恐怖が蘇る。
必死に写真を撮った。

喉の下に登山者が見えた、平蔵谷だ。
平蔵谷が見えた時は、助かったと安堵した。


喉を抜け、緊張から解放されジャンプターンで落ちていく




平蔵谷が見えた時は本当にほっとした







剣沢に到着しシールを付けてテント場に登り返す


緊張から解かれれば全身が重くなり牛歩のようにガスで薄暗い谷を進む。
剣御前の小屋でビールを買い足しするつもりが、昨日は強風で逃げるように剣沢に滑り込んでビール無し。
もしかしたらと目指した剱沢小屋は雪で埋まっていた。





テント到着
いけしゅん氏が有難い事に重いビールをボッカしており、
無事帰って来れた事に感謝して回し飲みで大脱走ルンゼ滑降を祝福した。



5月5日



翌朝は信じられない程の快晴

昨日停滞しなかった事を少し後悔しつつも、天気が悪くても無事「積雪期剱岳登頂滑降」できた事を思えば、
贅沢はいえない。
天気が良い事は気温上昇で雪崩や落石などのリスクは増すので、ベストとは限らない。



隣のテント方に撮って頂きました


テント撤収






剣御前小屋の支配人さんと 
岡大山岳部OBで昔少しだけですがお付き合いがありました



別山乗越(剣御前小屋)から広大な雷鳥沢へ
重荷にフラフラしながらも、それなりに気持ちよく滑れた。





ケイン濃イスギさんに名前を呼ばれ驚きました



東京在住で道産子の山スキーヤー
道具新調で今シーズンからスキー復活だそうです
爽やかな人でした





室堂バスターミナルに到着

まだ10時。
ビールにお昼寝の二人と別れ、時間もあるしせっかくなんで単独雄山を目指す!


目的は雄山神社真下のルンゼ滑降


一ノ越


登山道左が雄山ルンゼ


雄山 3003m


剱岳を望む

ドロップポイントの神社の裏へ回り込むと、
山崎カールへドロップしようとしていたスノーボーダーがおられた




自分は室堂ターミナルへの帰りを考え 雄山ルンゼドロップ




振り返り






剱岳 さようなら

また晴れた時に挑戦したい


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